今日は悔しくて仕方がない。
またしても、あいつにまんまとしてやられた。
「店長。あの人、例の「あの人」じゃないですか?」と気づいてくれたパートさんの声で、僕は部下とともにそいつを早足で追いかけていた。
「あの人」とは過去少なくとも2回、うちの店で万引きを繰り返し、ビデオにも写真にもとらえられた犯人だ。しばらく姿をみせていなかったので、やや記憶の彼方になりつつあったことは確かだ。
今回はビデオではなく、実際に本人を追いかけている。しかし残念ながら、そいつが犯行に及んだのかどうかはその段階では、定かでなかった。そこで若干の躊躇があった。しかしそいつは僕らの追跡に気づくと急に足を速めた。
まちがいない。またやったに違いない、と確信して声をかけようと足を速める。そいつは門をでて通りに出た。そこでやつは予想もしなかった行動をとったのだ。
なんと、そこにはハザードをつけたタクシーが止まっていた。そいつはそのタクシーに飛び乗ると、あっけにとられる僕らを尻目に、座席にふせて隠れるように走り去ってしまった。
タクシーを待たせて万引きするやつなんて聞いたことあります?!びっくりするやらあきれるやら。
でも、だんだん悔しさがこみ上げてきた。タクシーに飛びついてでも止めるべきだったなあ。悔しい。しかし犯行を確認していない時点ではなかなか強行できなかった。店にもどり防犯ビデオを確認してみるとしっかりその犯行の一部始終が写っていた。パートさんの交代時間で店に人が手薄になる時間を見計らって、ほんの10分弱の犯行時間。しかもタクシーで逃走。なんてやつだ。
今度見かけたらただではおかない。
絶対に許さん。