昨日は銚子で行われた第9回黒潮よさこい祭りに参加した。舞ちはらは3回目の参加となる。昨年は1次審査をトップで通過しファイナルで逆転され、準大賞に終わった。でも、その時はメンバーは大満足だった。賞をいただけるだけでもうれしかった。
しかし、今年は違う。メンバーの目標はもっと上を目指していた。
無情の雨と奇跡
朝からあいにくの雨が降り続いていた。銚子についてからも降り止まず、最初のメインステージも若干小降りになったがまだ降っている中での演舞となった。1本目から気合いを入れて踊るが合板のステージに水たまりができるほどの雨で、ジュニアメンバーの中では2度も転ぶものもいた。
次の演舞が1次審査のパレードだ。ここでまたしてもアクシデント。男隊のセンターを踊る、さえが謎の腹痛で歩けないほどの不調をうったえる。とりあえず1時間のインターバルを休ませ様子を見ることに。最悪の場合、トップのセンターなしで踊るかと覚悟しつつ、最後のフォーメーション確認に入ろうとしたときに、さえが戻ってきた。絶対に大丈夫だから踊らせてくれと。その想いに胸が熱くなった。
前日の練習のとき、さえはメンバー全員に手作りのお守りを作ってきてくれた。黒潮をはじめとする秋の陣で無事に踊れるようにと。みんなはそのお守りを衣装のどこかにつけてこの審査にのぞもうとしていた。
スタートの時間が近づく、僕はMC席に行く前にメンバーひとりひとりと握手をしたり、ハイタッチをして健闘を祈った。
いつの間にか奇跡的に雨はほぼやんでいた。天も味方してくれるんだ。
順番がきて、MCを始める。審査なのでそつなく、アドリブなしで、練習のときに毎回使っていた前口上を叫ぶ。演舞はスタートした。何度も何度も踊ったパレード練習が蘇る。みんなの声が90mはなれた僕にもしっかりと聞こえる。
練習では苦しいこともあった。いやなこともたくさんあった。先週できたのに今週できないこともたくさんあった。そんないろんなことが頭の中でみんなの演舞を見ながらフラッシュバックする。徐々に近づいてくるみんなの笑顔に僕も励まされて一段と声を張る。力の限りの4分17秒が終わった。集合してみんなにひとこと言おうと思ったときに、急に涙があふれてきた。なんだか訳の分からない涙だった。黒潮での1次審査という大きな山を越えて、力が抜けたようだった。
ファイナルへ
昼食後は連続2本パレードだったが、また雨が強くなってきていた。僕らは雨に弱い小道具の傘の使用をあきらめた。無理に使用して雨で壊れると、ファイナル進出したときに影響するからだ。見てくださるお客様には申し訳ないと思いつつも2連続パレードを踊る。最後は飯沼観音会場でのステージ演舞だったが、このときは旗の使用もあきらめた。雨にぬれて重くなった旗を少しでも乾燥させるためだ。この会場は昨年の1次審査が行われた思い出深いところだ。リラックスして楽しんで踊ることができた。恒例のイワシのつみれ汁をいただき、観音様にみんなでお参りをして、メイン会場へ戻った。
メインステージ前で待っていると、携帯が鳴った。
「舞ちはらさんですか?おめでとうございます。ファイナル進出が決定しました。メインステージ付近でお待ちください。」結果はアナウンスで知らされるものだとばかり思っていたので、ちょっと面食らっていると、周りにいたメンバーがなになに??と聞いてくる。仕方なしにファイナル進出できたことを伝える。その場にいない人もいたので何となく静かなファイナル決定だった。
その後アナウンスでも発表があり、舞ちはらは上位2チーム(この2チームは同点)から0.33点差で3位通過であった。2位通過のりえ蔵さんとは昨年の1次審査時と逆の立場になった。昨年は舞ちはらがトップでりえ蔵さんが2位だったがファイナルで逆転されてしまった。今年は追う立場だ。
演舞順の抽選があり、僕は昨年同様最後の6番目のくじを引き当てた。どんなもんだい!とみんなに自慢しようと振り向くとメンバーはすでにストレッチなどを行うために移動して誰もいなかった(笑)
最後のフォーメーションチェックと声出しの練習をして最後のステージへ向かった。
夢はかなうもの
前のチームの演舞が終わり、僕らの出番となる。僕らは全員で手をつないで輪を作り、声をかけた「舞ちはらは一つだ。絶対ひっくり返してやろうぜ!いくぞ!We are 舞ちはら!」
日が落ち、カクテル光線に照らされたステージに僕らは飛び出していった。
静かにMCを始める、手短に前口上を終わらせて「構え」に入る。曲がスタート。僕らはもう何も考えずに無心に踊った。ステージ演舞も踊り始めた7月頃とはだいぶ違う踊りになった。振り付けやフォーメーションもだいぶ変わった。かけ声なんかは1週間前に決まったくらいだ。でも、その積み重ねで今の踊りがある。何度も何度も踊ってきたステージ演舞だから何も考えずとも体が動く。
後でビデオで見て感じたがこのときの演舞は、一人一人の動きが大きく、人数も実際よりも多く見えた。そろった動きは一つの大きな生き物のようにも見える。
あっという間にエンディングがきて僕らのファイナル演舞が終わった。みんなの顔にもやりきった満足げな笑顔があった。後は結果を待つだけだ。
発表の時間になり、ファイナル進出全6チームがステージ上に全員整列する。発表はそのチームの曲が流されることで行われる。最初は3位の発表〜南総みよし烈火隊さんだった。そして2位は黒潮美遊潮っ子組だった。と、いうことは…僕の脳裏にまたあの敗北感が渦巻いた。なんとか、なんとか、お願いだ。
「第1位の発表です」司会者のアナウンスの後の数秒間が永遠にも感じられたころ、スピーカーから流れてきたのは、聞き慣れた太鼓の音〜そう、僕らの「笑う門には福来る」の曲だった!チーム全員が立ち上がって叫び、抱き合って、涙で喜びを分かち合った。
チーム結成以来8年何度も何度も審査を受けても、箸にも棒にもかからない日々が続いた。昨年やっとファイナルに残れるようになり、今年「大賞をとる」ことを目標にがんばってきた。その想いが、その夢がかなった瞬間だった。僕はあふれる想いで涙が止まらなかった。インタビューをされてもかっこいいことは何も言えず、賞状をいただくときも耐えられず泣いていた。
審査委員長からの総評で「非常に各チームとも僅差の競り合いだったが、舞ちはらさんの踊りが特に隙のない踊りだった。」との言葉をいただいた。
夢はかなうものなんだ。
一番最後に踊る
大賞演舞を初めて踊ることができる。たくさんの観客や今日参加したチームの方々が見守る中、一番最後にもう一度踊れることができるのだ。まるで夢の中ように思えるけど本当なんだ。
「楽しんで踊ろう!」僕らは喜びと感謝を全身で表して大賞演舞を踊った。見てくださった方にそれが伝わっただろうか?
苦しかったけども、よさこいを続けてきてよかった。思い続ければ必ず夢はかなうことを身をもって体験できた。
【第9回黒潮よさこい祭り結果】
大賞 YOSAKOI舞ちはら 得点 183.00
準大賞 黒潮美遊 潮っ子組 得点 179.00
3位 南総みよし烈華隊 得点 177.33
4位 チーム☆利ゑ蔵 得点 177.33
5位 雅華組 得点 167.67
6位 いばらき熊連 得点 158.67