舞神楽を通して感じたYOSAKOIソーラン祭りー前編

プロローグ

すっかり日も落ちて、北海道の乾いた冷たい風がほほに気持ちよくあたる。順番を待つ僕らの目の前で、セミファイナルを1位で通過してきた平岸天神が1番手として演舞をしていた。観客席は満員。舞台の袖や大通公園を見下ろす高層ビルからもたくさんの人がステージを見つめていた。そして、その演舞の模様は生中継で北海道全土に放送され、インターネットでも世界中に配信されていた。

ここはYOSAKOIの日本一を決める年1回の「YOSAKOIソーラン祭り」のファイナルステージ。よさこいを踊るものにとってこのステージで踊ることは夢の中の夢。僕はまさにその夢のステージに立とうとしていた。

昨年の覇者、平岸天神の演舞が終わりに近づき、僕らはステージ後方のスロープ下にスタンバイをした。緊張でのどが渇いてくる。僕が運ぶことになった旗の束を改めてつかみ直す。

「落とさない、転ばない、自分の役割を果たす」呪文のように口の中でつぶやく。心臓の鼓動が聞こえるようだ。

目前の演舞が終わった。アナウンスが呼ぶ。

「REDA舞神楽の皆さんです、どうぞ!」

僕らは口々に「さあいくぞ!」「よっしゃあ!」と自分に気合いを入れながら、大観衆が見つめる光のステージの中へ飛び出して行った。

1日目がスタート

2013年6月8日土曜日。僕はYOSAKOIソーラン祭りに参加するために、快晴の札幌に降り立った。以前から自分の「舞ちはら」がソーランに出場することを想定して、「チームのメンバー」としてお祭りに参加したかった。そこで今回REDA舞神楽のサポートメンバーに応募したのだ。以前のブログにも書いたが、サポートだけのはずが「旗士」として演舞にも参加することにもなり、舞台にも立つことになった。僕の役割はステージ演舞で小旗を演舞の終盤で振ること。旗をあげるタイミングを曲に合わせることと、他の色の小旗とシンクロさせることが重要。パレード演舞の時は5色の旗を演舞中に運搬し所定の位置へ運び、振り終わった旗を回収して次の演舞に備えることだ。数回の練習参加と自主練はしたのだが、全く自信などなく、他のメンバーの迷惑にならないかが気になって仕方がなかった。

集合場所に着くと、さっそく「変更の洗礼」をお見舞いされる。僕の持つ旗の色が緑から白に変わり、さらに立ち位置が変更になってなんとステージセンターに立つことになっていた。まいったなあと思うひまもなく。メンバーと挨拶を交わしメイク係からメイクも施してもらう。衣装の袢纏は僕のために新調してくれたそうだ。ミーティングを行ってから最初の演舞会場〜一番街・丸井今井前会場へ向かう。

会場に到着してからまずびっくり。ステージ形式で演舞予定だったのが、急遽、静止パレード形式に変更となる。時間がない中、慌てて準備。僕の出番はなかったが、お客様の反応は非常によかった。

歩いて大通り公園に戻りストレッチや水分補給を行う。

この時に舞神楽のサポート隊のすばらしさを実感した。給水用のペットボトルはもちろん、暑さ対策のためにかち割り氷を配ったり、栄養補給にバナナを配ってくれた。それ以外にも大道具や小道具、救急箱、修理道具などの運搬、写真の撮影などなど仕事は多岐にわたった。さらに札幌の地理に明るい人が水先案内人をつとめ、メンバーの誘導をしてくれた。踊り子が無事に踊れるのもこれらサポートがあってこそだ。

5回連続パレード(審査演舞)

つぎは大通り公園会場で5回連続のパレード演舞だ、最初の3回はほぼ連続。小休憩を挟んでさらに2回演舞する。2回目の演舞が審査対象となる。この演舞の出来でファイナルへの進出がきまるのだ。

踊り子達は待機している間、ストレッチをしたり声をかけあったりして、テンションを高めていく。全員で円陣を組み。かけ声をかけていよいよ通りに入る。

MCと歌姫が乗った地方車が側道から、大通りに入ってくると、手を振って歓声が上がる。

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時間だ。まずは1回目。僕は途中で交換する五色旗を列の最後尾から抱えて、隊列とともに進む。途中旗士を追い越して所定の場所に置く。そして旗士が振り終わった旗を回収して進む。演舞の最後は僕らのさらに後からくるサポートメンバー達も含めて、エンドラインを超えなければならない。僕は最初それを把握しておらず、演舞の最後に旗士から「早くこい!」と激しく手招きされた。なんとかおさまることができた。

続いて2回目の演舞。審査だ。お客さんの反応も上々みんな笑顔だ。でも、そんな反応をゆっくり楽しんでいる間もなく、旗を運び、回収した。桟敷席があるため、思った以上に道路幅がせまく、途中で旗の柄が桟敷席につっこんでしまうハプニングもあった。なんとか事なきを得て、演舞が終了。やれることはやりきった感があったが休む間もなく次の会場へ移動。観客席から「もとまっくさーん」と声がかかってびっくりする。見ると千葉のチームの知り合いだった(^_^;)

3回目の演舞、体力的に最もきついところかもしれない。でも、メンバーは力の限り踊った。終了して移動。若干の水分補給。

そして4回目、5回目の演舞。両側に桟敷席がなくなって視界も開ける。踊り子も旗士の体力もおそらく限界を超えているだろう。でも、誰一人として抜けるものもなく踊りきった。観客からの暖かい拍手、歓声、笑顔。

休憩場所で集まると、涙を流す踊り子もたくさんいた。これが札幌だ、これがソーランなんだ。うまく説明できないが、踊りきったものだけが感じることができる、この途方もない達成感が、YOSAKOIソーランの魅力なんだと思った。

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 (中編へつづく)

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