ちばYOSAKOIという舞台

僕が本格的なよさこいを見たのは2004年の11月に行われた第1回目のちばYOSAKOIだ。あの時の感激は今でも忘れない。僕がよさこいにのめり込むきっかけとなった祭り、そしていつかそのステージで踊りたいと憧れた祭り。それがちばYOSAKOIだ。

そして、今年僕ら舞ちはらは5度目のちばよさのステージにのぞんだ。

初日〜土曜日(10/27)

秋晴れの快晴に恵まれた土曜日。初日から気を抜くことはできない。なぜならこの日の参加チームの中から得点の高い1チームがファイナルステージへの切符を手に入れることができるからだ。

勝負は千葉中央公園で行われる、朝1回目のステージ演舞。どのチームも1回目の演舞は苦手だし、審査してほしくないだろう。でも条件は同じだ。やるしかない。舞ちはらは朝から気合いが入っていた。僕が集合時間に現場に行くともうすでに立ち位置をはじめていた。一通り確認を終えると、各隊ごとにフォーメーション確認をして、最後に声出し練習を行う。

開会式後間もなく、僕らの演舞順が回ってくる。折しも強い風が吹いていて旗士は苦労しそうだ。その予感は後に当たるのだが、僕らは円陣を組みかけ声とともにステージに飛び出していった。

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あっと言う間の4分17秒だった。小道具の落とし物もなかったところはよかったが、なんとなく力を出し切れなかった感があったし、やはり旗は風が強すぎて思うようには振れなかった。やはり朝一は厳しいな。

昼食をはさんで午後にもう1度中央公園で演舞し、市原に移動する。

市原のメインステージは昨年と同じく、千葉で最大級の広いステージだ。いい天気に誘われてお客さんもたくさん集まってきてくれた。いやおうなしにテンションが上がる。このステージで踊れるのはこの日だけ。もう一度なんとか踊りたいと願いながらフルテンションで踊り上げる。お客さんからの拍手、歓声がうれしい。

そして、最後はメインパレード。今年は昨年より距離が100m短くなり、300mを15分かけて踊るというルールになった。ソーラン系の僕らは2回の演舞だ。翌日はこのパレードの2回目が審査演舞となるので、その予行演習という意味合いが強かった。出る前から300mをどう踊るかでメンバー同士でまたまた大議論。いかに審査員にいいところを見てもらうかを、考えて考えてスタート地点を決めたりした。

そうこうしているうちに、出番がきて僕は地方車の上に登る。紫音さんの地方車は大きくて広い、そしてきれいだ。係員からスタートが告げられる。僕は力の限り叫んだ。ちょっと失敗だったのはなにも水分を持って上らなかったので、2本目の演舞の時は声が裏返り、かっこわるかった。2本の演舞を踊りきってこの日の出番は終了。

千葉中央公園で交流会に参加する。希望チームが思い思いの出し物を繰り広げる中、利え蔵さんの演舞はAKBの曲にあわせて各チームの演舞をちょっとづつ踊るというものだった。振り付けに特徴があるところが「ネタ」にされやすいのか、大御所のチームに混じって僕らの演舞が少し出てきたところは大笑いでちょっぴり誇らしく思った。

最後に土曜日のファイナル進出枠の発表がありREDA舞神楽さんが順当にファイナルに駒を進めた。

このときに僕はほぼファイナル進出はもう不可能だと思った。

今年のちばYOSAKOIのルールは、土曜日参加チームの中から1チーム、日曜日参加のチームを3つのブロックに分けて、各ブロックの上位2チームづつ合計6チーム(土曜日進出のチームが2位までに入った時はブロック3位が繰り上げ)、さらに審査員が全体から選ぶ特別枠が1チーム、合計8チームがファイナル進出となる。

舞ちはらが属するCブロックは県内外のファイナル経験強豪チームがなぜか大挙結集しており、その中で上位2位に入るのは逆立ちしたって無理と思っていた。口にはあまりしなかったけどメンバーも心のどこかで思っていただろう。だから、せめてCブロックのチームが土曜枠にてファイナル進出すれば、状況が少しは変わるかなと期待していた。だが世の中そんなに甘くはなかった。

2日目〜日曜日(10/29)

突然のスペシャルゲスト

2日目の最初のステージは五井駅近くの、旧イトーヨーカドー店内が会場となっていた。ここは市原市が買い取っていずれは市役所機能を移転する計画とのこと。そのためのアピールもあってあえて屋内の会場となった。入ってみてびっくり横幅が10mほどしかなく、急遽フォーメーションの変更を行う。旗も一番小さな旗のみを使用することに変更。ここで所沢から所沢風炎神伝〜雅〜のお二人がわざわざ見に来てくれていることを知りあいさつ。うれしかった。司会はしましまさん。他にもららさんやきのこさんが会場運営を手伝ってくれていた。

僕らがこの会場のトップバッターだったが、お客さんの数はまずまず。狭い会場をもろともせずに僕らは踊った。声が反響するのでお客さんにとっては、ある意味、外で見るより迫力があったかもしれない。

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演舞を終えて一息つこうとすると、声をかけてきてくれる男女が。なんと、僕らの楽曲を作ってくださっているASORAの代表さんと歌を歌ってくれている河瀬あいさんだった。2009年以来4曲も製作していただいているのだが、実際にお会いするのははじめてだった。メンバーに紹介すると大歓声が上がり、感激のあまり泣き出すものも。みんな口々に御礼をのべた。代表さんからは「実際に見て、キレのある素晴らしい演舞でした。」とお褒めの言葉をいただいた。名残惜しかったが次の演舞もあるのでそこでお別れとなった。ジュニアのメンバー達は河瀬さんにどうしても次の演舞で歌ってもらいたいと僕に頼んできたが、それはあまりにぶしつけなので我慢。

緊急事態

次の会場は市役所前。かなりの距離をシャトルバスを使って移動しようと考えていた。五井駅でバスを待つがなかなかこない。やっとこさきたバスに乗るが今度は途中のバス停の手前で右折待ちでバスが動かない。さらに途中のバス停では一度下車して乗り換えろと言われる。市役所行きのバス停は他のチームで大行列。これに並んでいては絶対に次の演舞時間には間に合わない。僕らは歩くか、自家用車に分乗して会場を目指すかの決断を迫られる。メンバーには小さな子もいるので歩くのは無理と判断して、車で移動することに。止めるところがあるかどうかが心配だったが、なんとか滑り込みセーフで到着。

市役所前での演舞

市役所の2階部分にあたる通路での演舞という変わった場所での演舞で、お客様は少なめだった。でも、佐久間市長がきてくださって一番前で演舞を見てくれた。僕もちょいと息抜きでMC席を飛び出しステージエンドまで飛び出してみる。メンバーには受けが良かった(?)

審査パレード

メインパレード会場に戻って、いよいよ審査演舞となる。曇り空の下、夕闇が近づきあたりは徐々に薄暗くなってきていた。地方車のライトが明るく見える。僕らはスタート地点に集まり。お互い握手をしたり、ハイタッチをしたり、ハグをしたりして健闘を祈り合った。やがて僕の乗る地方がやってきた。カメラマンとともに乗り込む。今日は片手にペットボトルも持った。学生実行委員会から15分以内に必ず演舞を終えるようにと注意があった。昨日とは全く違うぴりぴりした緊張感。僕は踊り子が追いついてしまわないように、なるべく地方車を前に進めてもらい距離をとった。一緒にのったカメラマンが僕に声をかける。「いよいよですね」

「ああ、いよいよだ」

合図がくる。MCをスタート。余計なことは少なめに静かにしゃべる。曲がスタート、みんなのかけ声、歌声が聞こえてくる。僕も力の限り叫び踊る。フォーメーションの移り変わりのなんてきれいなことよ。見事なシンメトリーだ。この高さから演舞を見ることはほとんどないので、はじめて見る舞ちはらは美しかった。この形を作るためにいったい何度踊ったのだろう。曲の途中なのに僕は涙が出そうになって、必死にこらえた。

1本目を終えていよいよ運命の2本目。ここからが審査の本番だ。メンバーも給水をしながらゆっくり移動。2回目のスタートラインに到達。さあ、いくぞ。満員の沿道の観客を巻き込むように、舞ちはらはゆっくりとゴールに向かって進んだ。一人一人の叫びや歌声が聞こえてくる。弾けるような鳴子の音が響く。審査員席の前をすぎ、力一杯のフィニッシュ。

「やるだけのことはやった」

地方車の上で僕はそうつぶやいた。

給水所でメンバーを集めて話をしようとしたときに、こみ上げてくるものを押さえきれなかった。達成感?満足感?なんだろう。どんな結果になろうとそれが舞ちはらの今の実力。悔いはないと思った。

これは夢なのか

ファイナル進出のチームには代表宛に電話連絡があるとのことだったが、他のチームも含めてなかなか連絡がこなかった。そこで舞神楽のげん先生と勝くんに出会い、「準備しておいた方がいいよ。舞ちはらは絶対(ファイナル進出の)可能性あるよ。」と言われる。事実、舞ちはらのブロックからは審査辞退チームが数チームあった上に、公開された一次審査の得点もまずまずのところにつけていた。そこで一応メンバーに集合をかけて待つことにしたが、アップをしたり練習を始めたりはしなかった。

なかなか発表にならない結果を聞こうと本部テントに近づいた午後5時49分、突然僕のiPhoneが鳴った。

「YOSAKOI舞ちはらさんの携帯ですね。おめでとうございます。ファイナルステージ進出が決定しました。」一瞬信じられなかった。そして自分でも何がなんだかわからなくなり、何度も聞き直した。そして、電話をしながら人ごみをかき分けメンバーが集まっているところへ走った。メンバーは興奮気味で電話をする僕を見つけその内容に聞き入った。

「ファイナルステージ3番目の演舞となります。18時22分からの演舞となりますので20分前にはステージ脇に集合してください。」聞いたことを一言づつメンバーにも聞こえるように僕も繰り返した。歓声が上がりメンバー同士が抱き合う。僕はみんなから質問攻めにあうが、感激に浸っている暇はない。演舞まで30分くらいしかない。まだ全員集まっておらず、そこからがまさにドタバタ。とにかく散らばったみんなを集めてステージ横に集合させストレッチを行う。

あのときげん先生たちのアドバイスに従っておけばよかったなと思った。まさか本当にファイナルに行けるとは。なんだか夢を見ているようで実感が湧かなかった。

折しも降り出した雨がだんだん強くなっていた。僕らはステージ裏で円陣を組み手をつないだ。「力の限り踊るぞ」

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勢いよく飛び出したステージは7色のカクテル光線で照らされ、雨にぬれた床が輝いて見えた。正面からのスポットライトでお客さんはよく見えないが、超満員だ。「舞ちはら〜!」と声をかけてくれる人もいる。ついにこのステージ立った。曲が始まり演舞がスタート。見ているお客さんからも手拍子をいただく。光とスモークそして降りしきる雨の中で僕らは感激を胸に踊りきった。

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ちばYOSAKOIという舞台

舞ちはらは優秀賞(第6位)をいただいた。ファイナルへは審査員特別枠での進出となったが、認めていただけて本当にうれしい。千葉はもちろん関東近県の中でも大きなちばYOSAKOIという舞台で、このような賞をいただけたのは本当にうれしいし誇りに思う。

 

僕らは急に強く降り始めた雨の中で無理矢理打ち上げられていく花火を見ながら家路についた。

 

 

 

 

ずぶぬれになって精魂尽き果てた僕は、翌日から激しい頭痛と下痢に襲われ、仕事を半日休むことに。